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sent31-0905092255/アジアから新インフル2( ......

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 バカにしていると言えば、この豚インフルエンザ騒ぎもそうだ。あんなに前から新型インフルは、A型インフルの亜型H5N1だというもっぱらの予想からからひどく外れて、「間違いでしたごめんなさい」の声も聞かれないうちに、亜型H1N1のスペイン風邪なんかと同じだと言う豚インフル騒ぎ。その豚もメキシコよりも、メキシコ発の 豚インフルがアメリカで繁殖した結果、人間に感染したようだから皮肉なもんだ。しかもアメリカで乳児が一人死亡したのが、問題が出て比較的早期だったから、スワっという感じになった。ところが、その子自体(宿主側)に免疫の問題があったようだ。その後の報道を見ていても、依然メキシコでは致死的だが、アメリカではそうでもなく、種類が違う気さえするのはどうしてだろう。
 免疫の観点から話してみようか。私は、ウイルスは、「生き物」だと思ってきた。だからその知恵がある。抗原変異という知恵だ。感染の過程では、マクロファージ軍が、自ら感染細胞となって感染者を食べて、フードプロセスし、抗原を調べて、ヘルパーT細胞軍に渡す。そこからの反応が、いわゆる宿主側(人体)の認証に対して、感染側の抗体という指紋で、確認しながらキラーT細胞軍が食べたり一酸化窒素やらインターフェロン(γ)、補体というもので融解したりしてやっつける訳だが、インフル軍はそれに対して、自分たちの指紋を変えることができる。これが抗原変異という戦術だ。これにより色んな間違った反応が、宿主側に起こるため、病気が悪化するのだが、その一つに、サイトカインストーム(サイトカインの嵐)と呼ばれる、ショックに近い他臓器不全を生じる反応の利用がある。これが、新型インフルの死因の原因とまで言われる。原子炉。。核分裂が、異常に誘発されて高温になり、炉が解ける(メルトダウン)ように、ある反応が次々に爆発的に起こっていくことを生物化学ではカスケード(滝)反応なんて言うが、有名なのは、炎症やアレルギー反応のカスケードだ。いずれも血管の壁を舞台に起こる。これを免疫の立場からサイトカイン(サイトカインとは色んな免疫細胞が出す伝達物質で、細胞障害能をもつものもある)の過剰から血管、組織の破壊が急激に起こることが、サイトカインストームである。
 古くからあるツツガムシ病。これは、有毒ダニがゴム長も着ないような釣り人に噛みつく。すると皮膚が破れ、ツツガムシの毒素が血管壁に付着。白血球やら血小板やらが集まり、ある局面では、血球が凝集して凝固反応が起こり、ある局面では、逆に凝集したものを溶解する反応が起こり、その周囲にアレルギー物質が遊離してきて、局所の腫れ(浮腫)やかゆみが生じ、かゆいから掻いたらそこから再び血球の凝集、血餅の融解などが起こり、それらから出てきたプロスタグランジンやらロイコトルエンなど等のサイトカインが血流にのって、全身にめぐり、発熱物質として熱をだす。原因がツツガムシだと分かればミノマイシンという抗生物質でやっつけられるが、分からないと、毒素とアレルギーなどの反応から他臓器不全を生じて死亡する。これなんぞは、カスケード反応の最たる例だが、サイトカインストームも一役買う訳で、ツツガムシだろうが豚インフルだろうが、相手を殺すには、相手の力を利用することに変わりはない。利用する力が大きいほど効果も大きいから、若い兵士やら、20から30台の若い人がターゲットになりやすいのも分かる気がする。もっとも若くて強いヒトを免疫系の暴走を利用してやっつける戦略はすごい。
 それ以外にもネット詐欺のフィッシングまがいの手も使う。例えばヘルペスというウイルスはvIL-10という物質を作る。これはIL-10というヒトのヘルパーT細胞から分泌されるサイトカインがあるが、それに非常に似た物質だ。vIL-10があるとヒトのインターフェロンγの機能が障害されるらしい。このインターフェロンは、ウイルスそのものを破壊する作用があるので、IL-10は、もともと免疫抑制的に働くサイトカインだけれど、おそらくインターフェロンγの分泌を制御する細胞の受容体に結合して抑制するんだろう。だから、その細胞の抑制を止めさせるために、ニセIL-10つまりvIL-10をウイルスが産生すると考えられる。こういう戦略を人間がすれば、「賢い」ことにならないだろうか。「遺伝子の知恵」とはこのように素晴らしい。たかがウイルスなんて、バカにしちゃいかんのである。知恵があるのは人間だけだと思っている人も多いけど、所詮ウイルスも人間も遺伝子は4つの塩基配列からできていて、違うのは数だけだし、大腸菌なんかでも人間のそれの6分の1の数は持っている。下世話な話だが、ウンコに住んでいる大腸菌はエライのである。第一、ヒトやサルの脳みそなんかも、その遺伝子からできる蛋白質や脂質からできている訳で、人間は巨大な終脳を持っているから、進化的に動物の長だから霊長類で、しかもそのボスだ、という幻想は、遺伝子のレベルからは馬鹿げた妄想の様だ。
 相手を倒すと言う意味で、免疫的な戦略を例とれば、これらの例のように、人間の脳が生み出す「人の知恵」と互角かそれ以上の「遺伝子の知恵」を目の当たりに見せつけられる事になるのだ。。。。さらに、我思う。人間の偉大な脳が作り出す「心」なるもの一体なんぞやと。
 蛇足だが、この「ちょっと一言」も歴史が長くなり、最近はあまり、忙しさにかまけて定期的にかけなくなったが、実は、こっちの医師会雑誌にも一部投稿している。その時、お願いだからテーマを一つにしてください、と言われることがある。。。しかしながら、インドネシアから、インフルまで、というか、マクロからミクロまでいつも現象は同時に起りつつ地球号は、時空を移動している。生き物は、ダイナミックだ。万象は常に関連して生じ、変化し消滅しているのである。(090509)